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baseball bat tenderness / MO'SOME TONEBENDER

モーサムが帰ってきた。 そう思った。

 

「鋭い」と「オシャレ」の間のようなギターリフを武器に、あくまで斜に構えてすかしたような声で歌うボーカル。

ソリッドに、時に唸るように鳴くベース。

そしてガレージバンドの音色で荒れ狂うドラム。

 

古くからのファンは一曲目「ヒューマンビーイング」に、初期〜SUPER NICEあたりまでの面影を連想しただろう。

暴力的ながら角の丸いミックスで聴きやすくはなっているが、間違いなくそれは昔見たモーサムの姿だった。

これまでのEDM路線を完全に払拭したのかと思った矢先、「FEEVEER」でかつてC.O.Wで見せたメロディアスな四つ打ちダンスミュージックが流れる

かと思えばますます初期の色を伺わせる中盤の連曲が構えていて、「ポップコーンダンス」のイントロギターリフの音色に完全なecho時代の錯覚を覚える。

しかしよく聴くとロッキンルーラあたりにありそうないい意味で間抜けな曲になっている。

そしてまたもやstruggle以降のノイズ・サイケデリック・エレクトリカルな連曲から、毎度おなじみ(おなじみな時点ですごいのだが)極め付けの壮大でセンチメンタルな泣きメロで締める。

 

出会ってしまった、と思ったガレージ色の強い初期の衝撃。

ポップになりながらも その確固たるメロディアスなスタイルにのめり込んだ安心感。

明らかな方向性の変化への疑問と、回答を渋る難解な曲の数々を生み出し続けた不安感。

そんないろんな感情が走馬灯のように、結成から一貫して発揮し続ける疾走感に乗って駆け巡る。

 

しかしそれぞれの楽曲は二番煎じではなく、それぞれのアルバムの続曲であるかのように洗練され、明らかに磨き上げられている。

 

なにかを思って、狙って生み出されたアルバムなのか、偶然の産物なのか。

百々のソロや、パートの入れ替えで事はさらに複雑になっている。

 

冒頭の否定になるが、モーサムは帰ってきていない。未だ回答を渋っている。

ジャケットの仮面の奥に問いかけても、当然はっきりした答えなんて返ってこないのである。