融 / 空気公団
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春。休日の朝。ひだまり。洗濯物。伸び。猫。家族。麻のカゴ。琺瑯のマグカップ。青空。光。
ほっこりと、まったりと、ゆったりとした世界があって、客観的に見ている、または入り込んでいるような曖昧な雰囲気で佇んでいる。
声質も演奏もふわっとしていながら、具体的な歌詞に乗せて日常を歌う。
こんなにわかりやすく世界観があるのに、既視感を全く覚えないのがすごい。
クラムボンほどソリッドではないし、フィッシュマンズほど浮遊感はない。矢野顕子ほど癖があるわけでもないし、YUKIのような歌唱力がある訳でもない。
しかも上記アーティストも、ひねり出さなければいけないほど似ていない。
このオリジナリティは何だろうか。
いくら頭で考えても答えは出ない。
頭を空にして聴くと、その空気に包まれて何となく答えが見えてくる。
しかし決して言葉にはならない。
春先のよく晴れた日、公園のベンチで、まどろんで、うたた寝して、目が覚めたら大好きな人がにっこり微笑んでくれるような景色の中に、何かが足りないのならば、それが空気公団だ。