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うれしくって抱きあうよ / YUKI

JUDY AND MARYのボーカル、YUKIのソロプロジェクト5枚目のアルバム。

 

旧来から追って来ているファン以外には解りづらいが、間違いなくここがソロとしてのYUKIのターニングポイントだろう。

 

JUDY AND MARYを解散してから、荒々しくエロティックに唄う彼女が居なくなってから、その続きを求めてソロを聴く。そんなリスナーが多かったろう。

その期待に応えるように、joyではバンドサウンドを中心に、真芯から敢えて少しずらした姿でソロの色をつけていた。

それに賛同するもの、懐古するもの様々だったが、枚数を重ねる毎に徐々にバンドのフロントとしてのYUKIの色は薄らいでいった。

 

そしてこのアルバムで、彼女はソロのボーカリストとして完成した。

 

そのあどけなさ、突き刺すようなハイトーン、母性、ドキリとする色気、奥行きを、喜びも悲しみも全てを、その鼻にかけた声に乗せて表現するようになった。

曲に、アルバムの流れにドラマが現われ、センチメンタルな、サディステックな喜びがひしひしと伝わってくる。

 

単なる声質の変化だけでなく、表現の幅の違いも見られる。

jazzyな曲からEDM、もちろんバンドサウンドや弾き語りまで、その全てそれぞれに合致するボーカリングが成される(これは曲と出会わなかっただけで、天性のものかも知れないが)。

 

声の端々に混ざるゴーストが、鼻にかけた吐息が、その感情をこれでもかと伝えてくる。

そしてその裏にある意味を聴き取ろうと、没入していく。

その頃には、既に虜だ。

 

一緒に楽しもうよ、から、その声自身で楽しませる段階まで来ている。