助演男優賞 / Creepy Nuts
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元暴走族、孤児院育ち、アウトローなバックボーンはない。
そこにあたるカウンターとして、有名大学出身や、いじめられっ子などのキャラクターがあるが、彼らは全く違った形でアウトボクシングを繰り広げる。
童貞と非モテという個性を、フリースタイルの場ではピラニアに生肉をぶら下げるごとく突きつけ、食い付いた相手を完璧なフローで更に食いつぶし、大会で腕を鳴らす。
その後ろで流れる音楽は、世界的な大会で上位に食い込むDJが繰り出す。
極めて確かな技術を持った2人は、巨大なコンプレックスで出来ている。
タイトル曲の「助演男優賞」は彼らのスタンスを明確に表している。
主役を張りたいのだけれど、そんな柄じゃないし、という葛藤は、多くの共感を得る。
しかもそれを歌う音楽はかっこいい。
自身の個性・武器を客観的に見て正しく戦う点では、このタイトルを付けた時点で勝ちだろう。見事だ。
音とフローに関しては上記実績から推して知るべしだが、叫ぶ言葉は自身の思春期の立ち位置の嘆きから、妬み嫉み、昨今のミュージックシーンへの嘆きまで様々だ。
しかし一貫しているのは、そのコンプレックスを堂々と、極めてカッコよく歌うことだ。
その姿は同じ境遇の者へ希望を、そうでないものへは憧れをもたらす。
ここで彼らはその境遇に逆転勝ちするのである。
大槻ケンヂが言った。
「コンプレックスもステージにあげればロックになる」
の言葉を地で行くカリスマをここに見た。