ロキソニンの音
やりたくないことをやって生きていくということは、あまりにもつまらないし、ストレスが溜まる。
受動的に生きていくということも、あまりにもつまらないし、ストレスが溜まる。
やりたいことを能動的にやって(イコールかも知れないが)生きていくことが、人生を一番楽しむ方法だ。
やりたくない仕事を受動的にやっていると、ふとしたなんでもないことが幸せに感じることがある。
私は今日、会社を早退した。
頭が痛い、という仮病だ。
寝不足で頭が回らないことと、つまらない仕事から抜け出したい気持ちが相まって、溜まった仕事や後の打ち合わせなどを考えずに帰った。
外はくもり。雨は降らなそうだが、晴れやかな気分にはならなかった。
コンビニから出てくる遅めの昼食を買った会社員の茶色いレジ袋。ローテクスニーカーをドレスコードにSNSに忙しない大学生のグループ。エスカレーターの手前で流れを無視して立ち止まり、行き先を振り返るスーツケースを引いた老夫婦。華やかなグループにいないまでも、気の合う友人との笑顔を絶やさない女子高生の長いスカートから見え隠れする膝。とっくにリタイアして日々を消化するのに必死な、電動自転車にのった老人の贅肉。スティーブンタイラーによく似た初老の女性。モノレールの車窓から見える高速道路の下り車線を走るレクサス。
全てが愛おしかった。こんな当たり前の景色のなかで生きて生きたい、と思った。
家にいる妻と生後2ヶ月の息子を想い、これからはじまる35年ローンを思った。
雨が降りそうだ。カバンの上から触れて、折り畳み傘があることを確認する。
痩せてはいるが背筋の伸びた老人が横切り、酸っぱい臭いが鼻をつく。
まもなく、立川北。立川北。