yamane / bloodthirsty butchers
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お世辞にも上手いとは言えない歌、奇を衒うような真似はしない楽器、どちらかと言えば淡々と進む曲調。オルタナティヴでポストロックな音楽。
こうして書き出すと、一見眠くなる要素しかないバンドだ。
普段から音楽に触れていない人にとっては、キャッチーさや体が動くようなノリもなく、退屈に感じるだろう。
その評判の高さを耳にしてから聞き出したとしても、まずその魅力に一瞬で気づくことはない。
NUMBER GIRLのような疾走感も切迫感もなければ、GRAPEVINEのような色気もない。
ただそこにあるのは、あまりにも圧倒的なセンチメンタリズムだ。
そっと置くようで時に小さく爆発するような歌唱と、指で押すだけで崩れそうな演奏、遥か遠くの方で溢れ出す原体験と欲望が、絶妙なバランスをもって成り立つ。
なにかが崩れれば極めてつまらないバンドになっていたかも知れない。
しかしこれ以上はない、と言い切れるほどの不可解な完成度でもって、ヘッドホンから脳天へ突き抜けていくのである。