5 years / The Bassons
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日本語hiphopで一時代を築くも、脳梗塞に倒れ、片眼を失ったDARTHREIDERが結成したバンド、The Bassonsの2ndアルバム「5 years」
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ドラム・ベース・ボーカルのスリーピースで、一言で言えばメタルファンクのミクスチャーバンドだ。
ベースは抑えめなエフェクトで、敢えて曲に隙間を作る。
最低限の音の厚みを残してミニマルにまとめるから、3つの音が浮き上がる。
そしてグルーヴが形を成し、頭の周りに纏わりつく。
hiphop畑のボーカルが務めるバンドは首をかしげるようなものが多いが、これは首が動く。
一辺倒な曲が続き飽きるかと思いきや、語りをメインとした曲や、R&B的なお楽しみオマージュもがっつり入ってくる。
カッティングの効いたストラトが入ったら、初期レッチリに近いかも知れない。
なぜこんなにも惹かれるのか、それはボーカルDARTHREIDERのこれ以上ないバックボーンからくる説得力だけではない。
薄い楽器隊、決して歌唱力があるとは言えないボーカル、そんな緩和と、とんでもなくピシャリとハマる一瞬が混在する。
ありきたりなジャンルのなかで、我々は全く新たな経験をそこに見ることができる。
NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST / NakamuraEmi
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1982年生まれのJPOP・HIPHOPシンガー、NakamuraEmiのメジャーデビュー1stアルバム「NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST」
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バックバンドはhiphopとしてはミニマルにまとまっており、基本アコギ+ドラムにベース・ほのかなシンセサイザーのみだ。
いわゆる低音を響かせたDJセットはなく、オケだけ聴いたらジャンルは想像し難いかも知れない。
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極めて癖がなく綺麗な声をしており、歌い上げるような曲を聴くとそっちでもいけるんじゃないかと感じる。
しかし要所のラップパートの音階は完全に王道日本ヒップホップのそれで、スチャダラパーを彷彿とさせるメロディで歌うから、あぁなるほどこっちだな、と思う。
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歌詞は全編通して強く、泥臭く上昇志向を語っており、hiphopにのせる意味や意義は大いにある。
日本語のhiphopは泥臭くなりがち(それが特徴)だが、小柄な身体で極めてエモーショナルに(ハイトーンでは泣くように)歌うからそこが見えて来ず、メッセージだけ浮かんで届く。
これは新しい届け方だろう。
ところどころ女性特有のワード(母親、スカート、まつ毛)が入ってくるから新鮮さもあり、主張の一貫性から違和感なく届けられる。
綺麗事を書かず、経験と一貫した主義主張をオールアウトで吐き出す148cmの身体は、日本の女を背負って行けるようなカリスマ性を持ち合わせている。